火20時開演
微分トポロジー入門-境界付き多様体とmod 2交差理論-
オンライン(zoom)
19:50
20:00
・ガイダンス回 無料
・本セミナー 65,500円
※早期割引あり
佐々木和美
∞セミナーの目的∞
・「微分位相幾何学」V.Guillemin /A.Pollack著、三村護 訳(現代数学社)の第2章を読み、(境界付き)可微分多様体とその写像についての理解を深め、横断性定理に基づくmod2交差理論を用いて有名なトポロジーの定理を発見的に証明する。
・テキストの演習問題に自ら取り組むことを通して、現代数学の考え方に触れ、数学する楽しさを体験する。
∞セミナーの概略∞
前回のロマ数トレラン「微分トポロジー入門-高次元の世界を感じる-」では、テキスト第1章「多様体と滑らかな写像」を用いて、可微分多様体間の滑らかな写像\(f:X\rightarrow Y\)の局所的な挙動を、導写像\(df_x\)(接空間の間の線形写像)によって分類し、逆像定理(正則値の逆像が部分多様体になること)や、横断性条件、写像の安定類などについて学びました。さらに、モース関数の存在(一般性)やホイットニーの埋め込み定理の\(2n+1\)次元版をサードの定理と接バンドルを用いて証明しました。また、各自の演習として取り組んでいただいた問題の中で、逆関数定理の一般化、リー群、レフシェッツ写像、可縮、ベクトル場、対心写像、滑らかなウリゾーンの補題など多数の応用例を扱いました。
今回のトレランは、前回に引き続きテキスト第2章「横断性と交差」を読み進め、最終的に有名ないくつかのトポロジーの定理を受講生の皆さんの力で証明することを目指します。
具体的にはまず、第1章で証明した基本定理を「境界付き多様体」へと拡張します。例えば、コンパクトな2次元境界付き多様体とは、下図のような有界で端のある曲面です。
上図のように、コンパクトな曲面の境界は(空集合でなければ)必ずいくつかの円周の和集合になります。(線分、つまり境界付き1次元多様体になることはありません)ちなみに、上図で、左の2つの円周\(X\)と右の1つの円周\(Y\)は、曲面\(Z\)を「張って」いますが、この状態を、\(X\)と\(Y\)は同境である(コボルダント)と言います。(参考:Wikipedia)
次元を1つ下げると、コンパクト1次元境界付き多様体とは、有界な曲線(の和集合)のことで、その境界は、下図のように必ず「偶数個の点」となります。
「何をいまさらそんな当たり前なことを?」という声が聞こえてきそうですが、なんと、この当たり前の事実を応用すると、トポロジーの有名な定理をいくつも証明できてしまうのです!通常これらの定理の証明には基本群やホモロジー群などの代数トポロジーの道具が必要となり、それにはまず群や加群の完全系列という難しい代数学を学ばなくてはならないところです。ところが今回は、「写像と点の交差数」の偶奇を調べるという方法で、裏道から証明してしまいます!
以下の定理は、聞いたことのある方もおられるでしょう。(定理の詳細は後日マスログで)
■ブラウワーの不動点定理
\(n\)次元球体\(B^n\)から\(B^n\)への任意の連続な写像は必ず不動点を持つ。(参考:Wikipedia)
[L.E.J.ブラウワー(右)1881-1966 オランダ。背理法を使わない直感主義を唱えた]
■ジョルダン・ブラウワーの分離定理(ジョルダンの閉曲線定理の高次元版)
\(n-1\)次元球面\(S^{n-1}\)の\(n\)次元ユークリッド空間\(R^n\)への埋め込みは、\(R^n\)を非有界な外部\(D_0\)と有界な内部\(D_1\)の2つの部分に分ける。(参考:Wikipedia)
[カミーユ・ジョルダン 1838-1922 フランス。線形代数のジョルダン標準形でも有名]
■ボルスク・ウラムの定理
\(n\)次元球面\(S^n\)から\(n\)次元ユークリッド空間\(R^n\)への任意の連続写像\(f\)には、必ず\(f(x)=f(-x)\)となる点\(x\in S^n\)が存在する。(参考:Wikipedia)
[カロル・ボルスク 1905-1982 ポーランド。ボルスク問題など]
[スタニスワフ・ウラム 1909-1989 ポーランド・アメリカ。ウラムの螺旋など]
そのほか、テキストには各節末に多数の演習問題がついています。授業内では、基本的には問題文の説明やヒント程度にとどめ、次の授業までの間に受講生の皆さんに演習問題と向き合う機会を持っていただきたいと思います。毎回、いくつかの問題にじっくり取り組み、実際に提出用の解答を書いてみることで、本文の主題をより深く理解できます。また問題内で新たな数学的内容が展開されたり、定理の拡張や別の定理の証明をせよ、といった本格的な問題もあります。
試行錯誤とその後の達成感こそ数学の醍醐味だと私は思います。問題の意味を取り違えたり、わからなくて質問したり、何度も訂正したり・・・。そんなこんなで最終的に書き上げた答案は、我が子のようにいとおしいものになるはずです。講義を聴くだけでは得られない、真の「数学する」体験を味わっていただければと思っています。
なお、この後も第3弾「ベクトル場とオイラー数の関係」、第4弾「ドラームコホモロジーとストークスの定理」の開催を計画しています。第3弾にご興味のある方は今回からの受講をお勧めします。
∞セミナーの進め方∞
隔週開催、1回2時間半×10回のオンライン授業で、V.Guillemin /A.Pollack の「微分位相幾何学」の第2章を解説します。
各節末の演習問題の解答はテキストに付属していません。受講生の皆さんと講師とで協力して解答を作成していきましょう。解答はオンラインホワイトボード(Miro)に提出したのち、次回の授業内で各自発表します(正解かどうかは皆さんの判断です!)。絶対ではありませんが、積極的な参加を希望します。(ただし、§5は演習問題が本文と一体化しているため、別途対応を考えます。)
使用テキストには誤植・語訳が多いため、適宜誤植リストを配布します。英語で読める方は原著Differential Topology V.Guilleman, A.Pollack (Pearson College Div 1974)を使っていただいても構いません。以下のサイトからPDFがダウンロードできます。
⇒PDF(英語版)
∞教科書∞
「微分位相幾何学」 V.Guillemin /A.Pollack著、三村 護 訳(現代数学社1998)
または
原著Differential Topology V.Guilleman, A.Pollack (Pearson College Div 1974)
∞参考書∞
解析入門I、II(杉浦)、線形代数入門(斎藤)、集合・位相-基礎から応用まで(佐久間)、Introduction to TOPOLOGY(Bert Mendelson)、多様体の基礎(松本)、微分トポロジー講義 ( J.W.Milnor蟹江訳 Topology from the Differentiable Viewpointの訳書 以下のURLに原著PDFがあります)
https://math.uchicago.edu/~may/REU2017/MilnorDiff.pdf
∞受講対象∞
1.コンパクト、近傍、相対位相、内部、閉包、埋め込み、可微分多様体、\(C^\infty\)級写像、導写像、はめ込み、しずめ込み、線形部分空間、線形写像、接空間、逆像、正則値、などの数学用語を知っている方
2.高次元の世界や、厳密な証明に興味のある方
3.実際に手を動かして問題を解く努力のできる方
∞セミナー内容(学習する項目)∞
※全10回で以下のトピックを解説していく予定です。(一部は演習問題内で扱います)
§1 境界付き多様体と多様体の境界について、サードの定理の拡張、上半空間、外向き単位法線ベクトル
§2 1次元多様体の分類、レトラクション定理、ブラウワーの不動点定理(\(C^\infty\)版、\(C^0\)版)、フロベニウスの定理
§3 横断性定理、ε近傍定理、横断性ホモトピー定理、拡張定理、法バンドル、焦点、曲率、管状近傍定理、法バンドルが自明になる条件
§4 mod2交差理論、境界定理、mod2写像度、代数学の基本定理(奇数次数)、同境
§5 mod2巻き数とジョルダン・ブラウワーの分離定理の証明
§6 ボルスク・ウラムの定理の様々な形とその証明
∞講師∞
佐々木 和美(ささき かずみ)
1972年 広島県生まれ 1990年東京大学理科一類入学 1996年 東京大学理学部数学科修士了
修士論文:曲面の写像類群の部分群のNielsen Realizationについて(指導教官:松本幸夫)
和から講師のほか、コントラクトブリッジ普及指導員、家庭教師、私立工業高専非常勤講師、都立中学校非常勤講師、私立大学学修相談員など多数の指導経験あり。
書籍の校閲・校正 多数(石井俊全氏、堀口智之氏ほか)
ロマンティック数学ナイトガールズ登壇(2017)
家族:夫、三女、猫、金魚
趣味:コントラクトブリッジ
∞開催場所∞
オンライン(zoom)
※好きな場所でご受講できます。「zoom」を用いてオンラインでセミナーを行います。
※ブラウザが利用できるPCやタブレットなどの環境をご用意ください。
※iPad等タブレットの使用は一部機能が制限される場合がございます。パソコン端末でのご参加を推奨いたします。
∞開催日時∞
第0回 10月12日(火) 20時00分~21時30分(ガイダンス回・無料)
第1回 10月26日(火) 20時00分~22時30分
第2回 11月9日(火) 20時00分~22時30分
第3回 11月23日(火) 20時00分~22時30分
第4回 12月7日(火) 20時00分~22時30分
第5回 12月21日(火) 20時00分~22時30分
第6回 2022年1月11日(火) 20時00分~22時30分
第7回 1月25日(火) 20時00分~22時30分
第8回 2月8日(火) 20時00分~22時30分
第9回 2月22日(火) 20時00分~22時30分
第10回 3月8日(火) 20時00分~22時30分
※10月12日の第0回は10月26日開講の本セミナーのガイダンス回となります。
※第0回に参加しなくても第1回目以降は申し込むことは可能です。
※セミナー時間150分の内、30分は受講生からの質問、議論に充てられるように設計しています。
※各セミナーの録画をゼミ最終回の6か月後まで視聴できるようにしますので、欠席の回があっても問題ありません。
∞お持ち物∞
筆記用具(ペン、ノートなど)
教科書「微分位相幾何学」V.Guillemin /A.Pollack著、三村護 訳(現代数学社)をご用意ください
∞料金とお申し込みに関して∞
・ガイダンス回(10月12日) 無料
⇒お申込み(https://peatix.com/event/3014647/view)
・本セミナー(全10回) 65,500円(早期割引:62,500円)
⇒お申込み(googleフォーム)
※セミナーの性格上本セミナーの定員は8名とさせていただきます(先着順)。
※本セミナーお申し込みの方に振込先の口座をご連絡いたします。
※最小履行人数は4名となります。最小履行人数に満たない場合、非開催となり、料金は返金させていただきます。開催有無は第一回ゼミの1週間前に確定となります。
※早期割引はガイダンス回終了後24時間以内に全回お申し込みをいただいた方に適用いたします。
※日程、時間の都合でガイダンス回に参加できない方は、担当の松中(メール:class@wakara.co.jp)までご連絡ください。ガイダンス回当日中に録画した動画を視聴できるように手配いたします。
∞本セミナー受講希望者の方向けの注意事項∞
・通信トラブル等が発生した時に、講師、受講生で円滑に連絡を取り合えるようLINEグループを作成します。LINEグループへの参加は必須とさせていただきますので、予めご了承ください。
・オンラインセミナー受講の際に必要となるパソコン、タブレットまたはスマホ等の通信機器、およびWiFi等のインターネット接続サービスは受講生ご自身でご準備いただきます。
・Apple Pencilなどのスタイラスペンやペンタブなど、画面にペンによる書き込み、描画を行える環境をご準備いただくことを推奨いたします。
・各セミナーの録画動画を最終回の1か月後まで視聴できるようにしますので、出席できない回は動画での受講が可能です。
・欠席者には録画動画だけでなく、セミナーで使用する配布資料(pdfファイルやurl等)も出席者同様配布いたします。
∞ロマ数トレランとは∞
「時間はかかってもいいから数学の美しさを中身からしっかり理解したい!」
聞いているだけでわくわくする華やかなテーマが満載のロマンティック数学ゼミ。
その根底となる理論からしっかり学びたい。ロマ数トレランはそんな声から生まれました。
ロマ数トレランは、ロマン溢れる数学を語ることができる講師による、講義形式ではなく、双方向の対話に重きをおいた受講者参加型の少人数制ゼミです。
実際に手を動かしたり、しっかりと質問、議論をする時間を設けることで
内容を確実に理解することを目標とします。同じ気持ちをもった仲間と一緒に学んだ先には新しい数学の世界が待っています。
~トレランとは~
山を縦走する山岳レースを意味するトレイルランニングの略です。
急坂は大変な時はありますが、いったん頂上に上がれば壮大な風景を楽しむことができます。
数学も同じです!平坦な道も、下り坂も、そして時にはハードな時もありますが、頑張って登りきれば素晴らしい風景が広がっているのです!
※ロマ数トレランでは受講生の理解に合わせて講師が適切な速度になるよう誘導しますが、受講者の理解を優先するため、カリキュラムの進度は確約いたしかねますので、予めご了承ください。
※質問の内容がセミナーの趣旨とそれる場合や、セミナーの適切な進行の妨げになると講師が判断した場合には、解説はセミナー内ではなく別途個別指導をご受講いただくようご案内することがあります。
※ロマ数トレランにはビデオ視聴以外に欠席保証はございません。ビデオは出席の有無に関わらずご視聴いただけます。
※無料ガイダンス回へのお申し込みはこちらから
https://peatix.com/event/3014647/view
∞企画運営∞
和から株式会社
渋谷(本社)・新橋・大阪にて社会人向けの数学個別指導教室「大人のための数学教室 和(なごみ)」や「大人のための統計教室和」を運営。数学が苦手な大人から 数学の業務・研究応用を 目的としているマーケター、経営者、大学教授まで月間400名を超える社会人に対して必要な数学や統計学の授業を日々提供している。企業におけるデータセンス研修やデータ分析研修も実施。
和から株式会社HPはこちら>>
∞お問い合わせ∞
和から株式会社 松中宏樹
MAIL:class@wakara.co.jp